2024年10月31日、トヨタとNTTは、モビリティ分野でのAI・通信の共同取り組みに合意した。これによってクルマには何が可能になり、われわれの暮らしはどのように便利になるのか? 国沢光宏氏に分かりやすく解説していただいた!!
※本稿は2024年11月のものです
文:国沢光宏/写真:トヨタ
初出:『ベストカー』2024年12月26日号
トヨタとNTTは何をしようとしているのか?
トヨタとNTTが「モビリティAI基盤」を共同で構築すると発表した。これ、普通の人だと「ナニをやるんだ?」と理解できないんじゃなかろうか。インターネットの黎明期にインターネットの説明をするくらい難しいのだけれど、いくつか簡単に紹介してみたい。
まず安全の問題。10年以上前から国交省はITSというシステムを構築しようとしている。例えば交差点にビーコンを付け、そこから信号データを送り、赤信号でクルマを停止させようというもの。
クルマが車載カメラの情報で信号停止したらITSの意味がなくなるため、国交省はADASによる赤信号や一時停止を認めないという本末転倒なことになっています。
赤信号や一時停止信号での減速制御だってできるのに国交省がダメだと言い張る理由って、ITSを実現したいからなのである。日本全国すべての交差点にビーコンを付けようとしたら膨大な金額が必要。さらにITSの管理会社も必要。天下り組織できて美味しいんだと思う。
モビリティAI基盤であれば信号の情報を吸い上げるだけで簡単に認知できる。そればかりか、携帯電話から出ている電波の情報を入れることで、交差点に人がいるかどうかまでわかる。子どもに発信機を持たせることで、通学時の道路の走行速度を制限することも可能。
トヨタとNTTは交通事故ゼロ社会に向けて取り組むと言っているけれど、実現できるかもしれません。トヨタとNTTのAI基盤、国交省の名前はなし。抜きでやりますね、ということかと。
エネルギー問題も重要。2050年のカーボンニュートラルに向け、太陽光発電に代表される自然エネルギーを上手に使わないとならない。簡単にいえば、作りすぎた電力と足りなくなった時の電力をどうするか、です。
モビリティAI基盤の機能のひとつに「電力の平滑化」がある。駐車中の電気自動車はカプラーで繋いでおく。すると電力余ったら充電。足りなければ給電という使い方が可能。そのコントロールをやりましょうというもの。
いつ立ち上がるか? おそらく次世代電気自動車プラットフォームに採用される車載OS『アリーン』に組み込まれると思う。2028年くらいから国内で試験運用を開始し、2030年あたりから本格運用に入るという。
NTTの光通信技術は世界TOPクラスと言われている。AI基盤が動き出すと、本格的な「繋がるクルマ」になる。
いきなり渋滞の最後尾に出くわしてヒヤリとすることや、いきなりアイスバーンに出くわして滑るようなこともなくなります。
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