2020年1月に登場したフォルクスワーゲン Tクロス。2024年夏のマイナーチェンジの際、「そういえば……テリーさんに乗ってもらってなかったな」と気が付いた。というわけで今回は満を持して、テリーさんにTクロスを試乗していただいた!!
※本稿は2025年5月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年6月10日号
待った甲斐あり!? 期待以上のクルマだった!
フォルクスワーゲン(VW)Tクロスは2020年1月に登場しているが、この連載では縁がなかった。そのTクロスが2024年夏に大規模なマイナーチェンジを行ったということで、試乗することになった次第である。
コンパクトなクルマが好きな私にとって気になる一台であり、今回「やっと乗れる」と喜んでいたわけだが、結論からいえば期待どおり、いや、期待以上のクルマだった。
VWといえばベーシックなクルマが魅力で、かつて徳大寺有恒さんが初代ゴルフを『間違いだらけのクルマ選び』で絶賛したのは有名な話だ。
だが、今やゴルフは高級車になってしまった。その代わり、かつての初代ゴルフのポジションにいるのが今回のTクロスだということがわかったのである。徳大寺さんが存命であれば、私のこの意見に賛同してくれたのではないかと思う。
端的に言えば、VW Tクロスは「青春の匂い」がするクルマなのだ。一方でゴルフはもはや「青春」からほど遠いクルマになっている。時代とともに役割が変わるということで、「いい悪い」の話ではないが、VWはやはり高級車よりベーシックカーが似合うのは確かだろう。
VW Tクロスは車格だけで言えばロッキー/ライズやヤリスクロス、あるいはホンダのWR-Vあたりと競合するSUVだ。
そのわりに今回の試乗車であるRラインは396万9000円もして高すぎるという意見もあるだろう。最もベーシックな「アクティブ」でも336万8000円だから、日本の同クラス車より100万円近く高いということになる。
VW Tクロスのエンジンは3気筒の1Lターボである。それだけを捉えると先述の日本車たちと同クラスということになるのだが、実際に乗ってみると明らかにクラスが違うと感じる。
数年前の1.5〜1.6Lクラスの乗り味で、しかも軽快。1クラス、いや、もしかしたら2クラスほど上に思える。つまり「高いだけのことはある」ということである。
徳大寺さんも天国で褒めているのでは?
VW Tクロスは内装や操作類がとてもシンプルなのもいいところだ。
何を血迷ったのか、VWは数年前からディスプレイのタッチ式スイッチに突き進んでしまい、もの凄く使いにくいクルマが多くなってしまった。
実は私もゴルフのワゴンを買って、あまりの使いにくさに嫌気がさして、すぐに売ってしまったという苦い経験をしている。
私の好きだったVWはどうなってしまったのか? と本気で嘆いていたのだが、その後、タッチ式をやめて物理スイッチに方針転換。ダメなところを認めて改善するという姿勢を見せた。頑固に続けなかったあたりはいい判断だったと思う。
Tクロスも操作系はシンプルで使いやすい。ATのシフトレバーも前後にストレートに動かすタイプで、今どきめずらしいくらいだ。
しかし、そのシンプルさがVWらしさであり、みんなでワイワイ乗っている時には余計なことを考えず、直感で運転できるのが楽しいし安全。つまり、そのあたりもまたTクロスが「青春の匂いがするクルマ」である理由なのだ。
Tクロスは今、VWで一番欲しいクルマだ。時代の雰囲気にも合っていると思う。私なら今回撮影したイエローのボディカラーで、最もベーシックなグレードを選ぶだろう。
徳大寺さんも天国で、「Tクロスは今、VWで一番いいクルマだ」と評論してくれるのではないだろうか。それくらいに素晴らしいクルマだった。
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